ケガをきっかけに始めた、将来のための身体づくり

ケガをきっかけに、「このままではいけない」と感じ、身体を見直そうと考える方は少なくありません。

 

 

一度痛みや不調を経験すると、日常生活や趣味、スポーツへの影響を実感し、改めて『健康でいられること』の大切さに気づかれる方が多い印象です。

 

 

「もう同じケガを繰り返したくない」

「今だけでなく、将来も元気に動ける身体を維持したい」

 

 

そうした思いから、トレーニングに来てくださる方が多くいらっしゃいます。

 

私たちが大切にしているのは、単に筋力を高めることではありません。

 

身体の“使い方”を見直し、負担のかかりにくい動きを身につけることです。

 

 

それが結果として、ケガの予防や再発防止につながり、長期的な健康の土台になります。

 

今回は、実際に継続して通っていただいている40代女性の方をご紹介します。

 

 

1.なぜトレーニングを始めたのか

3年前に肩を痛め、整形クリニックでリハビリを受けていました。

 

治療によって肩の痛みは改善しましたが、「このまま何もしなければ、またどこかを痛めてしまうのではないか」という不安が残ったそうです。

 

 

そこで、『痛みを取る』だけでなく『ケガをしにくい身体をつくる』ことを目的にトレーニングを始められました。

 

 

また、以前から感じていた悩みがもう一つありました。

 

それは「階段の上り下りで疲れやすい」ということです。

 

毎日のことだからこそ、「できるだけ楽に、安定して登り降りできるようになりたい」という目標を持たれていました。

 

 

2.動きをチェックして分かったこと

階段の上り下りでは、片脚で体重を支える場面があります。

 

そのため、まずは片脚スクワットで動作を確認しました。

 

特徴として立ち上がる瞬間に腰が過度に反ってしまう傾向が見られました。

 

 

本来しゃがんだ姿勢から立ち上がる際には、股関節と膝が同時に伸びることで効率よく動くことができます。

 

しかし、腰が強く反ると股関節がうまく使えず、体重を支える時に腰や膝の動く割合が増加して、腰部や膝関節などへの負担が集中しやすくなります。

 

 

以上の動きが原因で、疲れやすさや不安定さにつながっているとことを確認してトレーニングを進めていきました。

 

 

3.なぜ腰が反りやすくなっていたのか

身体を詳しく確認していくと、上体を支えるために

 

①背中が丸まることで

②腰の反りが強く出ている

という状態が見られました。

 

 

胸椎(背中の部分)の動きは、腰椎(腰の部分)への動きに影響しています。

 

 

そのため背中が丸まると胸椎が十分に伸びず(胸椎が伸展せず)、腰椎も連動して腰を反ることで姿勢を保とうとします。

 

 

そのような動きを日常的に繰り返してしまうことで、立っている姿勢でも同様の動きをコントロールする癖がついてしまい、腰の反りやすい状態になってしまいます。

 

 

4.腰を反らないようにするためには

胸椎の動きは腰椎に影響するため、まずは背中の丸まりを改善するために胸椎伸展(背中を伸ばす動き)の可動性を引き出していき、背中を真っすぐに保つための肩甲骨の安定性を獲得していきます。

 

 

上体を支えるため(姿勢をキープするため)の、脇腹(前鋸筋~腹斜筋)の働きが弱くなると腰の反りが強くなる動きが起こりやすくなるため、脇と脇腹の安定性を獲得していくことがポイントになります。

 

 

以上のポイントを押さえてトレーニングを継続していくことで、背中の丸まりと腰の反りを抑えて姿勢を支えられるようになります。

 

 

上体支えのチェックから3ヶ月後の動き

上体が支えられるようになってきたら、実際の動きに近い状態でも背中が丸まったり腰が反らないようにトレーニングをしていきます。

 

 

しゃがんでから立ち上がるまでには、体重をかけた状態で脚の曲げ伸ばしの動きに対して上体の位置が変化(上半身が前傾したりする)していきます。そのなかでも姿勢をキープできるようにトレーニングを進めていきます。

 

 

以上のようなトレーニングを継続していただくことで、しゃがんで立ち上がるまでの動きが安定するようになってきました。

 

 

5.どんなトレーニングをしていったのか?

実際に取り組んでいったトレーニングの内容と流れを紹介していきたいと思います。

 

 

① 胸椎伸展の可動性を改善する
前胸部(鎖骨下から胸の部分)の硬さがあると、肩甲骨の動きに影響する鎖骨の後方への動きが低下してしまいます。

 

鎖骨の動きが低下すると肩甲骨そのためまずは大胸筋のストレッチなどを行い、胸まわりの可動性を引き出しました。

 

② 姿勢を安定させる筋肉を使えるようにする

 

胸椎と腰椎の位置を保ちながら姿勢をキープするために、前鋸筋や腹斜筋を働かせて腰を反らなくても姿勢を保てる状態をつくります。

 

四つ這いで体重をかけたエクササイズを通して、背骨を真っ直ぐ保つ感覚を身につけていきました。

 

 

③ モーターコントロールトレーニング

 

可動性と安定性を獲得した後は、実際の立ち上がり動作に近い動きの中で姿勢をキープするトレーニングをしていきます。

 

はじめのうちはお客様自身での感覚だけでは、

 

・背中が丸くなりすぎていないか
・腰が反りすぎていないか

 

わかりにくいためトレーニング中の動きをチェックして、その場で伝えながら修正をしていき、正しい動きをするためにはどこに力が入ればいいのか、どの辺に体重をかければいいのかを確認していきます。

 

 

6.変化とご本人の声

約2年間継続して通っていただき、ご自宅での自主トレーニングもコツコツ続けてくださいました。

 

 

その結果、

 

・腰の反りが以前より自然に抑えられるようになった
・立ち上がり動作がスムーズになった
・階段の上り下りが楽になった

 

といった変化が見られました。

 

さらに、趣味のダンスにも大きな変化がありました。

 

これまでうまくできなかった動きがスムーズにできるようになり、「身体が思い通りに動く感覚がある」と嬉しい反応をいただきました。

 

ご本人からは、「正しいと思っていた動きや力の入れ方が、実は負担のかかる使い方だった。最初は分からなかったけれど、やっと最近少しずつイメージ通りに動かせるようになってきた」というお話もありました。

 

動きのクセは、自分では気づきにくいものです。さらに長年の日常を送る中で自分の動かしやすい状態で動きをくり返すことで、体に癖として染み付いてしまいます。

 

 

そのためトレーニングをはじめた時は、

『カラダを動かしにくい』

『自分では真っ直ぐのつもりだった』

『力が入れにくい』

などの声をお聞きすることがあります。

 

 

動かしにくい原因となっている関節の機能を整え、段階的にトレーニングを積み重ねていくことで、身体は確実に変わっていきます。

 

ケガをきっかけに始めた身体づくりが、今では「やりたいことを楽しめる身体作り」にも繋がっていて私たちスタッフも嬉しく思います。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

参考図書

・胸郭運動システムの再建法 三輪書店

・脊柱理学療法マネジメント メジカルビュー社

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