サッカー⚽️アジリティの科学 -前編-

サッカー選手なら、誰しもアジリティーの“キレ”を向上させたいと考えるのではないでしょうか。

 

 

試合中において、方向転換のクオリティーは対人プレー、ひいては勝敗に大きな影響を与えます。

 

 

研究データによると、サッカーの方向転換では、移動角度により身体がとる方向転換戦略は異なるということが明らかになっています。

 

 

また、試合中に発生する方向転換の約8割は、減速の少ない「90°未満」の角度で行われていることが分かっています。

 

 

つまり、実際の試合で最も求められるのは、完全にブレーキをかけて「止まる」ことではなく、トップスピードに近い領域 「0~60°」で、速度を殺さずにベクトルを変える能力なのです。

 

 

しかし、多くの選手は身体の構造的なエラーにより、必要以上の減速を強いられ、「相手についていけない」「ドリブルで置き去りにできない」といった損をしています。

 

 

今回は、Ligareの専門領域である解剖学・運動学的視点から、スピードを殺さずに曲がるための「足部・足関節のメカニズム」を解説します。

 

 

減速局面 ❶遠心力を吸収する立方骨のロック機構

この画像は、外側の足(左足)で右方向への方向転換を行っている様子です。

 

 

高速域でのカッティングでは、足部に体重の数倍もの遠心力がかかります。

 

この負荷に対し、筋力だけで耐えようとすると反応が遅れ、足部は外側に潰れて(回外して)しまいます。

 

これでは地面からの反発が得られず、足関節の捻挫リスクも増大します。

 

必要なのは、接地の一瞬で足部の剛性を高めることです。

 

その鍵を握るのが外側縦アーチを形成する

 

 

「立方骨」

 

 

です。

 

立方骨が下制していると、外側縦アーチは低下し、足部外側の安定性も低下してしまいます。

 

まずは、骨の配列を正常化し、立方骨が挙上できる状態を作ります。

 

 

❷長腓骨筋のプーリーシステム(滑車作用)

足の外側にある立方骨は、長腓骨筋の腱が走行する際の「滑車」として機能します。

 

 

長腓骨筋が正しく機能し、第1中足骨(母指球)を地面へ押し込むと、その張力によって立方骨は下方から持ち上げられます(挙上)。

 

 

この時、立方骨は隣接する踵骨と強固に噛み合い、足の外側アーチに強力な「剛性」が生まれます。

 

 

この「外側の安定性」があるからこそ、遠心力に負けず、着地衝撃を瞬時に「推進力」へと変換できるのです。

 

 

停止局面 ❶足関節背屈制限の解消

足部外側で衝撃を吸収した後、次は身体(重心)を新しい進行方向へ誘導します。

 

 

ここで重要になるのが、「足関節背屈の質」と「股関節の相対的内旋」です。

 

 

スピードカットにおいて、スネ(脛骨)はスムーズに前方へ倒れ込む必要があります。

 

 

しかし、アキレス腱の深部にあるケーラー脂肪体(Kager’s Fat Pad)や長母趾屈筋(FHL)が癒着していると、これらが距骨の後方移動を物理的にブロックしてしまいます。

 

 

結果として、踵が早期に浮いてしまい推進力を失うか、あるいは代償動作として足部を過剰に外転させ、捻挫やACL損傷のリスクを招きます。

 

 

「アキレス腱の奥」の滑走性を確保することは、怪我予防だけでなく、コンマ1秒の重心移動をスムーズにするために不可欠です。

 

 

❷相対的な股関節内旋

立方骨で壁を作り、足部が安定した状態で、同側の骨盤を後ろに引き込む(骨盤の後方回旋)動きを行います。

 

 

足部が固定された状態で骨盤が回るため、股関節では解剖学的に「内旋」が生じ、中殿筋や大殿筋が伸張性(エキセントリック)の収縮が生じます。

 

 

これが身体を回旋させるステアリング機能となり、膝を痛めることなく鋭角なターンを可能にします。

 

 

加速局面 踵骨後傾とポステリアチェーン

方向転換の仕上げは「再加速」です。

 

 

ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)で地面を蹴るのではなく、「踵(かかと)の操作」で全身のバネを使うのがトップアスリートの共通点です。

 

 

 

地面をプッシュする際、「踵を遠くへ突き刺す」ように伸ばします。

 

解剖学的には、踵骨がアキレス腱側へ引き上げられ、足底側が前方へ回る動き(後傾)を指します。

 

 

この動きは、以下の2つの連動を生み出します。

  1. ウィンドラス機構の発動: 足底腱膜が巻き上げられ、足部の剛性が最大化する。
  1. ポステリアチェーンの最大化: 足底腱膜~アキレス腱~ハムストリングス~大殿筋へと続く背面筋群にテンションがかかる。

 

この連鎖により、ふくらはぎという小さな筋肉ではなく、「股関節伸展(大殿筋)」という大きなエンジンを使って爆発的な加速力を得ることができます。

 

 

Ligareのアプローチ

理論上は理解できても、実際にこの動きを体現するには「構造」が整っている必要があります。

 

 

• 立方骨に乗れるだけの長腓骨筋の機能があるか?

 

• 距骨が後ろに滑り込むだけの後方組織の柔軟性はあるか?

 

• 踵骨を後傾させるだけの足趾・足底の連動はあるか?

 

 

「筋力はあるのにキレがない」「足首の痛みが消えない」。

その原因は、動作の負荷に耐えられない身体の構造にあるかもしれません。

まずは自分の足が「正しく動く状態」にあるか、確認することから始めましょう。

 

 

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Ligareのファンクショナルコースでは、日常生活での肩こりや腰痛、膝痛などの不調改善を【コンディショニング+パーソナルトレーニング】でトータルサポートを行っています。

 

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参考文献:

  1. Bloomfield, J., et al. (2007). Physical Demands of Different Positions in FA Premier League Soccer. J Sports Sci Med.
  2. Dos’ Santos, T., et al. (2018). The Effect of Angle and Velocity on Change of Direction Biomechanics. Sports Med.

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