26.01.13
ランニングで膝内側が痛む原因-鵞足炎のメカニズムと予防トレーニング-
ランニングをしている方の中で『目標タイムを更新したい』と思って練習量を増やしたり、走行スピードを上げていくうちに、膝の内側に痛みが出てしまった経験はありませんか?
今回は、その中でもランナーに多くみられる『鵞足炎』に焦点をあてて解説していきます。
膝に痛みが出始めると、思うように練習を継続できずに目標としている大会に向けて走っているなかで、目標を達成できるか不安を感じてしまうなどの声を聞くことが多いです。
マラソンなどの長い距離でタイムを縮めるためには、走行距離を増やしたり一定のスピードを維持する練習が欠かせません。
しかし、走る距離が増えれば接地回数は増加し、走るスピードが上がれば一歩あたりの接地衝撃も大きくなります。そのため練習量や負荷量は必然的に増加していき、結果的に脚への負担が蓄積し痛みとして症状が表れるケースが多くみられます。
膝の内側が痛くなる原因は?
多くみられるのが膝に痛みが出るとランニングをせずに休み、痛みが落ち着いたら走り始める。
しかし、『走り出すとまた同じ場所が痛くなってしまう。』このような経験を繰り返しているランナーは少なくありません。
このようなことが起きる原因として、『膝を痛めやすい動きを無意識のうちに繰り返していること』が多くみられます。
休むことで一時的に炎症が落ち着くことで痛みが軽減しても、走り方や身体の使い方が変わらなければ、再び同じ部位に負担がかかってしまいます。
膝の内側を痛めやすい動きの特徴として、『接地中に膝が内側へ大きく入る、または急激に内側へ倒れ込む動き』がみられます。(膝が外反する動き)
では、なぜ膝が内側に入ると、膝の内側を痛めやすく(いわゆる鵞足炎に)なるのでしょうか?
鵞足炎になるメカニズム
接地する瞬間から乗り込むまでの間(接地初期~支持期中間)に膝が過度に外反すると、外反方向への動きを制御しようと鵞足を構成する筋に過剰な力が入りやすくなります。
過剰に力が入ることで付着部分にはストレスが増加してしまい、接地するたびにストレスが加わることで炎症が起きて痛みを生じてしまいます。
なぜ膝が外反してしまうのか?
膝が外反してしまう原因のひとつとして、腹筋をうまく働かせられていないことが挙げられます。膝の問題とは関係なさそうに感じますが、実は腹筋の安定性はランニング中の膝の動きに大きく影響します。
では、なぜ腹筋がうまく働かないと、膝の外反が強く起こってしまうのでしょうか?
腹筋が十分に働かないと、まず腰の反り(腰椎前弯)が強くなります。すると骨盤は前方へ傾き(骨盤前傾)、その影響が連動して太ももが内側方向へ動く(股関節の内転)動きが起こりやすくなります。
ランニングの接地時は、足が地面に固定された状態になります。その状態で太ももが内側へ入る動きが生じると、膝は逃げ場を失い、外反方向への動きが助長されてしまいます。
このように膝の痛みや外反は膝そのものだけでなく、体幹や股関節など膝以外の部位の機能低下が原因となっているケースも多くみられます。
どんなトレーニングをしたらいいのか?
ここまでお伝えしてきたように、膝の外反は膝そのものだけでなく、体幹部分や股関節の機能低下が影響して起こるケースがあります。
ランニング中は、脚を前後に振り出す動きを比較的速いスピードで繰り返すため、どうしても腰が反りやすい状況になります。 特にスピードが上がった場面や疲労が蓄積してくると、体幹の安定性が低下し腰の反りが強く出やすくなります。
そのような状況でも腹筋を働かせ体幹を安定させたまま脚を動かせるようにすることが、膝への余計な負担を減らすうえで重要になります。
今回は膝内側痛(鵞足炎)予防のために『接地してから脚を後方へ動かす動作(股関節伸展)に対して、腰の反り(腰椎前弯)が過度に出ないようにコントロールするトレーニング』を紹介していきたいと思います。
鵞足炎を予防するためのトレーニング|股関節伸展可動性改善
まずは、股関節前面を走行する筋の伸張性を引き出すことから行います。
股関節前面筋の柔軟性が低下していると、股関節を後方へ動かす(股関節伸展)際の可動域が制限されてしまいます。
その結果、本来は股関節で行うべき動きを、腰を反らす動き(腰椎伸展)で代償してしまうことがあります。
この代償動作が続くと腰の反りが強まり、膝の外反を助長する要因になります。
股関節伸展の制限を改善するために腸腰筋のストレッチを行い、股関節をスムーズに後方へ動かせる状態をつくっていきます。
下部腹筋活性化エクササイズ
股関節伸展の可動性を引き出したあとは、股関節伸展の動きに合わせて腹筋を適切に働かせるエクササイズを行っていきます。
柔軟性を高めるだけでは、実際の動作の中で腰の反りをコントロールすることは難しいため、動きのなかでコントロールする力を身につけることが重要です。
このエクササイズでは、股関節伸展の動きに対して、『腰を反らすのではなく、骨盤を後傾させるような腰の曲げる動き(腰椎屈曲)を出しながら』実施していきます。
このように負荷を低くした状態から、下部腹筋が働いた状態で股関節を使う感覚を身につけていき、ランニング中の過度な腰の反りを抑える動きにつなげていきます。
モーターコントロールトレーニング
最後に行うのが実際のランニング動作に近い形で動きを統合していくモーターコントロールトレーニングです。
ここでは股関節の屈曲から伸展へと移行する動き、つまり接地してから蹴り出す局面において、腰椎と骨盤帯が過度な動きでないようにトレーニングを通して身体で覚えていきます。
ストレッチや筋力トレーニングで得られた柔軟性や筋活動を、最終的には動作の中で無意識に使える状態にしていくことが目的になります。
意識しなくても腰を反りすぎず股関節主導で動けるようになることで、膝への負担軽減にもつながります。
トレーニングとして膝立ちの安定した姿勢から行い、体幹部分のコントロールが保てるようになったら、徐々に立位へと移行していきます。
段階的に負荷と難易度を上げることで、ランニング動作への再現性を高めていきます。
膝の内側が痛くなる原因は、膝そのものではなく膝以外の部位の動きが影響して起こることが特徴として多くみられます。
実際には膝自体の可動性や動きに大きな問題がなくても、体幹や股関節の機能低下から起こる動作の癖によって、膝に過剰な負担がかかり痛みが生じてしまうケースがほとんどです。
そのため痛みを繰り返すときには「膝のケア」だけではなく、どの動きで負担が集中しているのか、なぜ膝にストレスが集まってしまうのかを全身の動きから見直すことが重要になります。
今回ご紹介したストレッチやトレーニングは、ランニング中の腰の反りや股関節の使い方を整え、膝への負担を軽減することを目的としています。
タイム更新を目指して練習量やスピードを上げていきたい方こそ、ぜひ一度ご自身の動きをチェックしてみてください。
Ligareではランニング動作に近い動きをチェックしたうえで、身体機能を評価していき、一人ひとりに合わせたトレーニングやコンディショニングのサポートを行っています。
膝の痛みを我慢しながら走るのではなく「長く走り続けられる身体づくり」を行い、これから先も安心してランニングを楽しめる状態を目指していきましょう!!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考文献
・中長距離ランナーの科学的トレーニング デビット・マーティン他 大修館書店
・下肢のスポーツ疾患治療の科学的基礎 蒲田和芳他 Nap
・股関節理学療法マネジメント 永井聡他 メジカルビュー社





