膝前十字靭帯 術後リハビリテーション | アスリハ編

前回の「膝前十字靭帯 術後リハビリテーション メディカルリハ編」では、術後3ヶ月までのリハビリテーションの流れについてご紹介しました。

 

今回はジョギングを開始し始める3ヶ月以降のリハビリテーションについて前回同様に

 

「 どの段階で何を獲得し 」

「 どの基準を満たすべきなのか 」

 

を中心にご紹介していきます。

 

 

再建術後のリハビリテーションの流れ

近年ACL損傷のリハビリテーションは、時間ベースtime-basedのプロトコルから、個別化された進行基準ベースcriterion-basedのプロトコル2)に移行しています。

 

 

進行基準ベースのリハビリは、時期や経過ではなく確かな機能回復のもとに進行するため、トレーニング強度を高めた際や実際に競技復帰をしていく中で疼痛や動作不良が出現する可能性が低く、また仮に出現した場合でも対応策を考えやすいという利点があります。

 

 

リハビリテーションの流れとしては、術前・術後早期~術後3ヶ月までをメディカルリハビリテーション、術後3ヶ月以降をアスレティックリハビリテーションとして進めます。

 

 

競技復帰においては、術後早期の復帰は再受傷のリスク因子となり3)、術後9ヶ月以降に再受傷率が低下する3)という報告がなされています。

 

 

基本的には9ヶ月以降ですが、患者のスポーツレベルや求めるスポーツ復帰は個人で異なるため、6~12ヶ月など復帰時期はそれぞれです。

 

 

再受傷のリスク

ACL損傷後の最大の課題の一つが 「再受傷」 です。

 

前十字靭帯再建術後に再び断裂してしまう確率は決して低くありません。

特に 10代~20代前半の競技者では、再断裂率が20~30%に達する と報告されており5、競技レベルが高いほどリスクは上昇します。

 

また、同側の再断裂だけでなく、反対側のACLを損傷するケースも多い ことが明らかになっています6

 

時期としては、術後1年以内が多く7)、反対側断裂は術後2~5年に多いとされています8)

 

ACLR後のリハビリにおいて、再発予防は「競技復帰(Return to Sport)」の延長ではなく、復帰したその瞬間から始まる最重要テーマ と言えます。

 

 

手術後3-4ヶ月目のリハビリ

ジョギングが開始され、ランニングやジャンプへ移行するための準備段階として最大筋力の向上を図ります。

 

 

また4ヶ月目から開始するアジリティTRの準備として、体幹・股関節の抗回旋トレーニング(回旋する力に抵抗する)も開始します。

 

 

▼目的
• 有酸素運動の再構築
• 最大筋力の向上
• 股関節・体幹の抗回旋能力強化

 

 

【リハビリメニュー】

• ブルガリアンスクワット
• 体幹・股関節抗回旋TR 

 

 

現場で使える進行基準】

・可動域|膝屈曲可動域130~140°以上(4)
・筋力
CKCトレーニングで疼痛/腫脹の増悪がない
片脚立ち上がりテスト30cm可能

・動作の質
ジョギングで疼痛/腫脹の増悪がない

 

 

抗回旋トレーニングで膝を守る

❶「体がねじれる」と「膝が内側に入る」は連動している

膝外反(ニーイン)は、単に膝が内側にカクッと折れるだけでなく、解剖学的には「太ももの骨(大腿骨)が内側にねじれる(内旋)」という動きを伴います。

つまり、「上半身や骨盤が不要にねじれないようにガチッと止める(抗回旋)」ことができれば、この連鎖を断ち切り、太ももの骨が内側にねじれるのを防ぐことができます。

 

❷お尻の筋肉(中殿筋・大殿筋)が働きやすくなる

膝外反を防ぐには「お尻の筋肉(中殿筋・大殿筋)」が重要となります。

土台(骨盤・体幹)がグラグラだと、お尻の筋肉は力を十分に発揮できない状態となります。

抗回旋トレーニングで体幹を固め、骨盤を安定させることは、「お尻の筋肉がフルパワーで膝を外側に引っ張り続けるための足場」を作ることになります。 「抗回旋(体幹)」と「外転・外旋(お尻)」がセットになって初めて、強力な膝外反抑制効果が生まれます。

手術後4-5ヶ月のリハビリ

この時期からランニングを開始し、方向転換能力の元となるムーブメントトレーニングを実施します。

 

また、slow SSCトレーニング(主に股関節)を取り入れ、着地動作の基礎を作ります。

 

 

▼目的
• ランニング動作の獲得
• アジリティ動作の基礎構築
• slow SSCでのパワー発揮

 

 

【リハビリメニュー】
• CMJ
• 減速動作
• パワートレーニング (slow SSC)

 

 

現場で使える進行基準

・可動域
膝屈曲可動域140~150°以上(4)
・筋力
CKCトレーニングで疼痛/腫脹の増悪がない
・動作の質
ランニングで疼痛/腫脹の増悪がない

 

股関節での力の吸収と発揮

股関節での「力の吸収」と「発揮」が有効な理由は3点あります。

❶衝撃分散

 お尻と裏ももの筋肉を使い、膝(ACL)への衝撃を逃がす。

❷姿勢制御

 膝が内側に入る(ニーイン)のを防ぎ、靭帯のねじれを防ぐ。

❸拮抗作用

 脛を前に引き出す力(大腿四頭筋)を抑制し、後ろに引く力(ハムストリングス)を動員する。

膝は股関節と足首に挟まれた「被害者」になりやすい関節です。

「膝を守るために、股関節を鍛えて使う」という意識が予防の核心となります。

減速動作のためのムーブメントトレーニング

減速動作のトレーニングが必要な理由は、「止まる瞬間の姿勢や筋活動のエラー」を修正するためとなります。

❶重心制御

 上体が起きた状態にならずに股関節を使った姿勢で止まる。

❷衝撃分散

 1歩で止まらず、ステップを刻んで負荷を逃がす。

❸予備収縮

 着地前に裏ももの筋肉を働かせる準備をする。

これらを反復練習として身体に染み込ませることで、とっさの時にも膝を守れるようになります。

「股関節の機能」を、実際の「動き」の中で使えるようにするのが、このムーブメントトレーニングの役割です。

Ligareのファンクショナルコースでは、日常生活での肩こりや腰痛、膝痛などの不調改善を【コンディショニング+パーソナルトレーニング】でトータルサポートを行っています。

 

トライアルは随時受け付けております。

 

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